ファインバブル技術について

ファインバブルが日本の産業を変える

環境、農業、食品、水産、医療等をはじめとする各分野で、ファインバブルの活用に関する研究開発、応用化が進んでいます。

ファインバブルの定義

ファインバブルは国際標準化機構(ISO)により100μm以下の泡と定義される。
ファインバブルには、マイクロバブルとウルトラファインバブルの2種類がある。

ウルトラファインバブル

泡の直径 数十nm~1μm
目視 不可能(無色透明)
動態 水中に長期残存(液中安定性)
数週間~数ヶ月の寿命がある
浮力よりも粘性力が大きい
ブラウン運動(微細振動)
同サイズの比較対象物 ウイルス(数十~100nm)
タバコの煙(数十~500nm)

1μm以下の泡のウルトラファインバブルはナノサイズ領域に近いため、最初「ナノバブル」と呼ばれた。その後、国際標準化され、現在、以下のような理由によりウルトラファインバブルと呼んでいる。

  • ナノリスク(ナノ領域物質群の生体への影響が未確定)というマイナスイメージの言葉があること
  • ファインバブルは直径100~300nmと計測されるが、ナノテクノロジーの規定は100nm以下であること
  • 健康・美容関係などでナノバブル水と称される商品名が多いことから、学術で定義するウルトラファインバブルを区別するため

マイクロバブル

泡の直径 1μm~100μm
目視 可能(白濁)
動態 非常にゆっくりと上昇
水中で消滅
同サイズの比較対象物 スギ花粉(約30μm)
黄砂(500nm~5μm)

マイクロバブル以上の直径の泡はミリバブル/サブミリバブルと呼ばれる。

ミリバブル/サブミリバブル

泡の直径 100μm~
目視 可能
動態 上昇速度が速い
水面で破裂
同サイズの比較対象物 通常の泡(数mm~)
髪の毛の直径(約80~100μm)

ウルトラファインバブルの特徴

ファインバブル生成のプロセス
(経済産業省九州経済産業局「ファインバブル活用事例集」より)

ファインバブル技術開発の歴史

赤潮被害の救済

牡蠣養殖イメージファインバブルの発見は1988年と新しい。その前年(97年)赤潮で広島のカキは45億円という大損害を受けていた。水質浄化の研究者、徳山工業高等専門学校の大成博文教授(当時)は、広島県カキ養殖業者から被害改善の依頼を受けた。
大成教授は直径50μm程の微細気泡発生装置を海面下10mに設置し実地実験を行ったところ、効果は現れ、カキは死滅を免れた。この泡は、水の溶存酸素量を増やしただけでなく、生物活性効果を生んだと考えられた。
この時、泡はマイクロバブルと呼ばれた。泡は気液二相の流体を高速旋回させる遠向心分離作用を応用した装置で発生させた。
これがファインバブル技術の起源とされる。

ファインバブルの基盤技術の確立

マイクロバブル発生装置は今では多様な製品が販売されている。その発生原理は、旋回液流式、加圧溶解式、微細孔式など、数種類に分類できる。用途に応じて使い分けられる。
ウルトラファインバブルは主に生成されたマイクロバブルを原料とし、製造装置毎に経験的ノウハウに基づき製造されている。
ブラウン運動(微細振動)中のウルトラファインバブルは物理化学的特性(圧力、温度、噴出、蒸発、溶解、各種反応、電位的特性など)を豊富に持つ。液体の種類や性質、気体の種類により、ウルトラファインバブルの特性を変えることができる。
ウルトラファインバブルの計測技術の精度が向上し、製造技術が確立した。

ファインバブル技術の応用

ファインバブル活用可能分野および活用例

経済産業省九州経済産業局「ファインバブル活用事例集」より

21世紀に入ってから正確な検証データに基づく研究が進み、ファインバブルの効果、メカニズムが分かるようになってきた。

気体溶解効果

液体中に気体を大量かつ効率的に溶かすことができる。

気体封入効果

気泡の中に目的に応じた気体を封入することで、ファインバブルに更なる機能を付加することができる。

ファインバブルに封入する気体とその機能

O₂ 酸素 農作物育成、微生物活性、魚の養殖
O₃ オゾン 殺菌、高度水処理
CO₂ 二酸化炭素 炭酸泉、中和処理
Air 空気 洗浄、カキの養殖、香りの封入
N₂ 窒素 食品加工、鮮度保持
F フッ素 医療分野での活用

洗浄効果(界面活性効果、衝撃圧力効果)

ファインバブルはマイナスに帯電し、プラス帯電物質(汚れなど)を吸着する。
液体の表面張力が下がり洗浄効果を発揮する。
バブルが個体表面で崩壊する際、極微少のジェット流が発生し、洗浄効果を上げる。

応用分野例

  • 洗浄分野(高性能洗浄水)
  • 液晶・半導体・太陽電池製造分野(半導体洗浄)
  • 水処理分野

触媒効果(触媒的効果)

比表面積が非常に大きく、流動性を持たせることで、界面での化学反応が促進される。

応用分野例

  • 化学分野(化学反応促進)
  • 新機能材料製造分野

殺菌・消毒効果

ファインバブルの圧壊により生成されたフリーラジカルやオゾンが、菌やウイルスを攻撃し、殺菌・消毒へ。
オゾンのウルトラファインバブル水など。

応用分野例

  • 化学分野(酸化分解)
  • 液晶・半導体・太陽電池製造分野(半導体洗浄)
  • 食品・飲料水分野(食品衛生管理、鮮度保持等)
  • 化粧品分野
  • 農業・植物栽培分野(養殖漁業)
  • 医療・薬品分野

脱臭効果

ウルトラファインバブルはマイナスに帯電し、プラス帯電物質(臭い)を吸着する。

応用分野例

  • 水処理分野(水質浄化処理)
  • 新機能材料製造分野

微粒子吸着効果

ウルトラファインバブルはマイナスに帯電し、プラス帯電物質(粒子)を吸着する。

応用分野例

  • 水処理分野(水質浄化処理)
  • 新機能材料製造分野

生体活性化効果

ウルトラファインバブルは細胞の隅々まで行き渡るため、生体へ吸収されやすくなる。
オゾンと酸素のウルトラファインバブル水は魚介類の治療にも活用できる。
水の溶存酸素濃度の改善効果、微生物の活性化による汚染物質の分解効果など。

応用分野例

  • 農業・植物栽培分野(植物の成長促進、養殖魚)

摩擦力低減効果

ウルトラファインバブルの存在により液体と固体との間の摩擦力が低減される。

応用分野例

  • 液晶・半導体・太陽電池製造分野(積層ウエハ分離)

【引用・参考文献】
株式会社アサヒリサーチセンター「加速するファインバブル技術の産業化」
経済産業省九州経済産業局「ファインバブル活用事例集」 より